間脳の解剖と機能について、正しいものを2つ選ぶ問題です。
まずは脳の構造のもっとも基本的な分類では、大脳、脳幹、小脳の3つから構成されます。
個体発生初期には、中枢神経は、前脳、中脳、菱脳から構成され、その後に前脳は終脳と間脳に分かれます。
終脳は大脳半球(前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉)、大脳基底核、大脳辺縁系などに分かれます。
以下の分類を覚えておくと良いでしょう。
こちらで各部位の区分や分類を確認しておきましょう。
一番左側の大脳、小脳、脳幹、延髄をまとめて「中枢神経系」と呼びます。
脳幹部は、間脳、中脳、橋および延髄から構成されております。呼吸、循環など生命活動の基本的な営みを支配すると供に、知覚情報を大脳皮質に中継したり、末梢に向かう運動指令を中継する機能を担当しています。
これらを踏まえて、各選択肢の解説に入っていきましょう。
解答のポイント
間脳の機能(視床、視床下部など含めて)を把握していること。
その他の生理学概念(白質、灰白質など)を理解していること。
選択肢の解説
『①間脳は中脳と小脳の間にある』
もともと間脳とは、大脳と中脳(脳幹)を結ぶ部分という意味で名づけられ、視床、視床下部を中心とする第三脳室を囲む構造を意味します。
位置関係を下図で確認しておきましょう。
こちらからもわかるとおり、小脳と中脳は近くに位置していますね。
視床や視床下部などの間脳と呼ばれる箇所は、その上に位置しています。
以上より、選択肢①は誤りと判断できます。
『②視床は卵形の白質の塊である』
『⑤視床は温痛覚や深部感覚の中継に関わる』
視床は、大脳皮質、大脳辺縁系、大脳基底核に囲まれた間脳のうち、背側部を占める領域で、腹側に視床下部が位置しています。
視神経の上に位置するところに名称の由来があります。
視床は、大きな卵大の灰白質(かいはくしつ)です。
灰白質とは、中枢神経系の神経組織のうち、神経細胞の細胞体が存在している部位のことで、肉眼で灰色に見えます。
灰白質は脊椎動物の中枢神経系にあり、人間で最もよく発達しています。
これに対して白質(はくしつ)とは、神経細胞体がなく、有髄神経線維ばかりの部位を指します。
つまり、神経細胞(ニューロン)の細胞体に乏しく主に神経線維が集積し走行している領域ということになります。
視床は、感覚中継基地として重要な役割を果たしています(感覚受容器;視覚や聴覚などから入力される情報を大脳に振り分ける)。
嗅覚を除き、視覚、聴覚、体性感覚の入力中継部位であり、体性感覚信号をそれぞれの大脳皮質感覚野へ伝え、各感覚信号の受容と識別を行っています。
上記の「体性感覚」とは触覚、温度感覚、痛覚の皮膚感覚と、筋や腱、関節などに起こる深部感覚から成っています。
なお、内臓感覚は含みません。
皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味します。
深部感覚は固有感覚または自己受容感覚とも呼ばれ、筋受容器からの伸縮の情報により、身体部位の位置の情報が得られます。
以上より、選択肢②は誤り、選択肢⑤は正しいと判断できます。
『③外側膝状体は聴覚の中継に関わる』
外側膝状体(がいそくしつじょうたい)は、脳の視床領域の一部であり、中枢神経系の網膜から情報を受け取り、視覚情報の処理を行います。
眼球と大脳の間で中継を行う神経核です。
ちなみに「膝状」とは、膝のように折れ曲がったとの意味です。
選択肢内の「聴覚の中継に関わる」のは、内側膝状体です。
内側膝状体は視床に属する神経核群であり、中脳下丘と大脳皮質聴覚野の間に位置する聴覚伝導路の中継核です。
聴覚情報を側頭葉の聴覚野へ送ります。
以上より、選択肢③は誤りと判断できます。
『④下垂体は視床下部の支配を受ける』
視床下部は、内臓の働きや内分泌の働きを制御し、生命現象をつかさどる自律神経系の交感神経・副交感神経機能および内分泌機能を全体として総合的に調整しています。
食物摂取、水分摂取、性行動を調節、更にホメオスタシスの維持も制御しています。
細かく言えば、体温調節、抗利尿ホルモン、血圧、心拍数、摂食行動や飲水行動、性行動、睡眠、子宮筋収縮、乳腺分泌などの本能行動、怒りや不安などの情動行動(大脳皮質・辺縁系皮質)の調節、自律神経系をコントロールする中枢の役割の他、内分泌(下垂体ホルモンの調節)の中枢も担っています。
下垂体は、部分的に脳から派生したもので、視床下部の真下に位置しています。
下垂体から分泌されるホルモンは甲状腺、性腺、副腎皮質など、他の内分泌腺の活動を起こします。
内分泌器官である下垂体には、血管が非常に発達しており、分泌されたホルモンが効率よく血流に乗って全身に運ばれるようになっています。
下垂体前葉のホルモンの分泌を調節するホルモンは、視床下部から分泌されており、下垂体を通る血管のうちの一部は、視床下部を経由してから下垂体に入るため、視床下部の分泌調節ホルモンの刺激が効率よく下垂体前葉に伝わるようになっています。
一方、下垂体後葉ホルモンは、視床下部の神経細胞で産生され、神経細胞の軸索を通して運ばれます。
この軸索は視床下部から下垂体後葉にまで達しており、ここで血管に放出されます。
以上より、選択肢④は正しいと判断できます。